女性の薄毛(女性型脱毛症・FAGA)の治療で、日本皮膚科学会のガイドラインが女性に強く勧めている薬はミノキシジル1%外用です。ミノキシジル内服とスピロノラクトンは、国内では脱毛症の治療薬として承認されておらず、効果と安全性の根拠も外用薬とは異なります。
女性型脱毛症とは、髪の成長期が短くなることで、頭頂部を中心に広い範囲の髪が細く薄くなる状態です。
本記事では、日本皮膚科学会の男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(2026年9月時点の最新版)と、国内外の添付文書・論文をもとに、治療薬ごとの位置づけを整理します。ガイドラインの文献検索は2016年12月までのため、それ以降の研究は本文で分けて紹介します。
女性型脱毛症(FAGA)とはどんな状態?
女性型脱毛症は、髪の毛が生え変わる周期のうち成長期が短くなり、休止期にとどまる毛根が増えることで起こります。ガイドラインは、成長期が短くなる仕組みは男女で同じとしています。
男性型脱毛症との違いは、薄くなる場所と時期です。
| 項目 | 女性型脱毛症 | 男性型脱毛症 |
|---|---|---|
| 薄くなる場所 | 頭頂部を中心に広い範囲。生え際は保たれることが多い | 生え際の後退や頭頂部 |
| 始まる時期 | 更年期以降に増える | 思春期以降 |
| 男性ホルモンとの関係 | 男性ホルモンだけでは説明できない場合がある | 男性ホルモンが主な原因 |
英国の377人の調査では、女性型脱毛症は50歳未満で6%、70歳以上で38%にみられました。日本人女性159人の研究では、脱毛はおおむね40歳以降に現れ、頭頂部の中央から広がる型が中心でした。
FAGAは「女性の男性型脱毛症(Female AGA)」の略として使われる呼び方で、ガイドラインは男性ホルモンだけでは説明できない場合があることから「女性型脱毛症」の病名を採用しています。
女性型脱毛症と見分ける必要がある薄毛は?
女性の薄毛には、女性型脱毛症以外の原因によるものがあります。ガイドラインは、診断の際に次の原因を除外する必要があるとしています。
- 慢性休止期脱毛: 頭全体の髪が一時的に抜けやすくなる状態
- 全身の病気に伴う脱毛: 甲状腺の病気(慢性甲状腺炎)、膠原病など
- 貧血
- 急激なダイエットや消耗性の病気に伴う脱毛
- ホルモン補充療法や薬の影響による脱毛
- 円形脱毛症の一部の型: 頭全体がまばらになる型
原因が異なると治療も異なります。薄毛が急に進んだ場合や、髪以外の体の変化を伴う場合は、治療薬を使う前に皮膚科で原因を確かめることが大切です。
ガイドラインで推奨されている治療は?
日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)が女性型脱毛症に推奨度A(行うよう強く勧める)としている治療は、ミノキシジル1%外用のみです。主な治療の推奨度は次のとおりです。
| 治療 | 女性型の推奨度 | (参考)男性型の推奨度 |
|---|---|---|
| ミノキシジル外用 | A(1%) | A(5%) |
| LED・低出力レーザー | B | B |
| アデノシン外用 | C1 | B |
| 自毛植毛術 | C1 | B |
| カルプロニウム塩化物外用など | C1 | C1 |
| フィナステリド内服 | D | A |
| デュタステリド内服 | D | A |
| ミノキシジル内服 | D | D |
| スピロノラクトン内服 | 記載なし | 記載なし |
推奨度は、Aが「行うよう強く勧める」、Bが「行うよう勧める」、C1が「行ってもよい」、Dが「行うべきではない」を意味します。LED・低出力レーザーについて、ガイドラインは推奨度Bとしつつ、機器は国内でまだ認可されていないと記載しています。
ガイドラインは2017年に公表され、文献検索は2016年12月までです。2026年9月時点で新しい版は公表されていません。2017年以降に報告されたミノキシジル内服やスピロノラクトンの研究は、推奨度に反映されていません。
ミノキシジル外用の効果と副作用は?
ミノキシジル1%外用は、ガイドラインで女性型脱毛症に推奨度Aとされた治療です。国内では、ミノキシジル1%を含む一般用医薬品(第1類医薬品)が女性用として承認されています。
日本人女性280人を対象とした試験(Eur J Dermatol 2007)では、24週で細くない毛の数が、1%外用群で1cm²あたり8.15本、プラセボ群で2.03本増え、差は統計学的に有意でした。医師の評価で中等度以上の改善がみられたのは、1%外用群29.2%、プラセボ群11.8%でした。
47件の試験をまとめたコクランレビュー(2016年)は、ミノキシジル外用でプラセボより毛髪数が1cm²あたり約13本増えると報告しています。2%と5%のあいだに効果の差はみられませんでした。
ミノキシジル外用の注意点は?
リアップリジェンヌの添付文書は、効果が分かるまで少なくとも6か月の使用が必要とし、中止すると徐々に元に戻るとしています。主な注意点は次のとおりです。
- 使用できない人: 20歳未満、妊娠中・授乳中の人、出産や避妊用ピルの中止に伴う脱毛、壮年性脱毛症以外の脱毛、急に斑状に抜ける脱毛、頭部全体の脱毛
- 相談が必要な人: 高血圧・低血圧、心臓や腎臓の病気、むくみがある人、65歳以上
- 副作用: 頭皮の発疹・かゆみ・かぶれ・ふけ、頭痛、めまい、動悸、急な体重増加、手足のむくみ
- 初期脱毛: ガイドラインは、使い始めに一時的に抜け毛が増える場合があるとしている
動悸・胸の痛み・めまい・急な体重増加・手足のむくみが出た場合は、使用を中止して医師に相談してください。
ミノキシジル内服の効果と副作用は?
ミノキシジル内服薬は、もともと高血圧の治療薬として開発された薬で、国内でも海外でも脱毛症の治療薬として承認されていません。国内では内服薬そのものが承認されておらず、医師が海外から輸入した製剤を自由診療で処方します。
日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)は、臨床試験が行われていない、利益と危険性が十分に検証されていないとして、推奨度D(行うべきではない)としています。
2017年以降、海外では低用量(1日数mg以下)で使う研究が報告されています。
| 研究 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Vañó-Galván 2021(J Am Acad Dermatol) | 1,404人(女性943人)の後ろ向き調査 | 副作用は多毛15.1%、ふらつき1.7%、むくみ1.3%、頻脈0.9%。副作用による中止1.7% |
| Sobral 2025(Int J Dermatol) | 内服と外用を比べたランダム化比較試験4件・279人のメタ解析 | 毛髪密度に差なし。多毛は内服で多い(相対リスク2.01) |
限られた比較研究では、低用量のミノキシジル内服が外用より明確に優れるとは示されていません。一方、顔や体の毛が濃くなる多毛は内服で多くみられます。
米国の降圧薬としての添付文書は、心臓のまわりに液体がたまる心嚢液貯留や、狭心症の悪化を警告しています。降圧薬としての用量でのデータで、低用量にそのまま当てはまるものではありませんが、心臓の病気がある人、血圧が不安定な人、妊娠中の人は服用を避ける必要があります。
長期の安全性や、外用と比べた効果は、2025年に発表された国際的な専門家の合意でも今後の課題とされています。むくみ・動悸・息切れ・急な体重増加が出た場合は、服用を中止して受診してください。
スピロノラクトンの効果と副作用は?
スピロノラクトンは、国内では高血圧・むくみ・原発性アルドステロン症の治療薬として承認されている薬で、脱毛症は承認された効能に含まれていません。男性ホルモンの働きを抑える作用があり、海外で女性の薄毛に使われることがあります。
日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)に、スピロノラクトンの記載はありません。女性型脱毛症を対象とした主な研究は次のとおりです。
| 研究 | 対象・方法 | 結果 |
|---|---|---|
| Sinclair 2005(Br J Dermatol) | 女性80人(スピロノラクトン200mg 40人・別の抗男性ホルモン薬40人)、比較対照なし、12か月以上 | 2群を合わせて改善44%、変化なし44%、進行12% |
| Werachattawatchai 2025(Int J Womens Dermatol) | 閉経前の女性48人、100mg対プラセボ、24週、全員がミノキシジル3%外用を併用 | 中等度以上の改善38%(プラセボ9%)。毛髪数の差は有意でなかった(p=0.063)。月経不順37.5% |
スピロノラクトン単独の大規模なプラセボ対照試験はなく、コクランレビュー(2016年)も追加の試験が必要と結論しています。現時点では、ミノキシジル外用と組み合わせて使った場合の小規模な報告が中心です。
スピロノラクトンの注意点は?
アルダクトンAの添付文書に記載された主な副作用と注意点は次のとおりです。
- 高カリウム血症: 腎臓の機能が低下している人や、カリウムを増やす薬を使っている人で起こりやすい。重大な副作用に挙げられている
- 月経不順・乳房の張り: 内分泌の副作用として、月経不順、無月経、乳房の腫れや痛みが報告されている
- 服用できない人: 高カリウム血症、無尿や急性腎不全、アジソン病の人など
妊娠中・妊娠の可能性がある場合、脱毛症の治療を目的としたスピロノラクトンの使用は避けるのが原則です。添付文書の表現は国内と米国で異なります。国内の添付文書は、妊婦には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与するとしています。米国の添付文書は、動物実験で男の胎児の女性化がみられたことから、妊婦への使用を避けるか、男の胎児へのリスクを説明するよう求めています。
脱毛症の治療は妊娠中に急ぐ治療ではないため、妊娠を希望している人や妊娠の可能性がある人は、服用前に医師に伝えてください。
女性に使えない薄毛の薬は?
男性型脱毛症の治療薬であるフィナステリドとデュタステリドは、女性には推奨されていません。日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)は、いずれも女性型脱毛症に推奨度D(行うべきではない)としています。
閉経後の女性137人を対象とした1年間の試験で、フィナステリドはプラセボと効果に差がありませんでした。フィナステリドは男の胎児の生殖器の発育に影響するおそれがあるため、妊娠中・妊娠の可能性がある女性・授乳中の女性は服用できません。デュタステリドは女性への投与が禁忌とされています。
家族や知人の男性に処方された薬を、女性が使うことは避けてください。
効果はいつから?治療はどのくらい続ける?
女性型脱毛症の治療薬の効果は、少なくとも6か月続けてから判定します。薬ごとの目安は次のとおりです。
| 治療薬 | 効果判定の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| ミノキシジル1%外用 | 少なくとも6か月 | 国内の添付文書 |
| ミノキシジル5%外用(フォーム) | 3か月で変化が出ることがあり、少なくとも6か月 | 米国の添付文書 |
| ミノキシジル内服 | 研究では数か月単位で評価されるが、標準的な効果判定の時期は確立していない | 各研究 |
| スピロノラクトン | 臨床試験の評価時点は6〜12か月 | 各研究 |
髪の毛は1か月に約1cmずつ伸びるため、変化が目に見えるまでには時間がかかります。使い始めの時期に一時的に抜け毛が増えることがあり、自己判断で中止せずに医師に相談します。
女性型脱毛症は進行する性質があり、ミノキシジル外用の添付文書は中止すると徐々に元に戻るとしています。治療を続けるか、やめるかは、効果と副作用を見ながら医師と相談して決めます。
FAGA治療の費用はどのくらい?
女性型脱毛症の治療は、公的医療保険が適用されない自由診療です。2026年9月29日に、編集部が主要なオンライン診療サービスと医療機関の公式料金ページを確認した結果は次のとおりです(税込・1か月分・単月購入の薬代)。
| 治療 | 1か月の薬代の目安 |
|---|---|
| スピロノラクトン単剤 | 約3,200〜6,600円 |
| ミノキシジル内服単剤 | 約3,300〜7,700円 |
| ミノキシジル内服+スピロノラクトン | 約9,100〜13,200円 |
| ミノキシジル外用 | 約3,850〜15,400円 |
薬代のほかに、診察料、送料、血液検査の費用がかかる場合があります。対面の専門クリニックでは、内服と外用を組み合わせたセットで月3万円を超えることもあります。
市販のミノキシジル1%外用(一般用医薬品)は、薬局で薬剤師の説明を受けて購入できます。内服薬とスピロノラクトンは、医師の診察と処方が必要です。
キレイパスオンラインクリニックでの取り扱い
| メニュー | 内容(1か月分) | 定期配送(税込) |
|---|---|---|
| 発毛スタンダードセット | ミノキシジル2.5mg 30錠+スピロノラクトン25mg 60錠 | 8,180円 |
| 発毛ストロングセット | 上記+ミノキシジル外用2% 1本 | 14,100円 |
| ミノキシジル内服 | ミノキシジル2.5mg 30錠 | 2,880円 |
| ミノキシジル外用 | ミノキシジル外用2% 1本 | 8,980円 |
| スピロノラクトン | スピロノラクトン25mg 60錠 | 5,380円 |
料金は2026年9月時点で、送料550円が別途かかります。診察料は無料です。自由診療のため、公的医療保険は適用されません。
ミノキシジル内服薬は国内未承認医薬品で、脱毛症の治療薬として承認している国はありません。ミノキシジル外用2%は、国内で女性用として承認されている1%の一般用医薬品と濃度が異なる未承認の製剤です。いずれも医師が海外の医薬品会社から輸入しています。個人輸入の医薬品に関する注意は、厚生労働省の個人輸入において注意すべき医薬品等についてを確認してください。
スピロノラクトンは国内で高血圧・浮腫などの治療薬として承認されている薬で、国内の正規代理店から購入しています。女性の薄毛の治療への使用は、承認された効能・効果に含まれない適応外使用です。
諸外国では、ミノキシジル内服薬は米国で重症の高血圧の治療薬として承認されており、米国の添付文書では心嚢液貯留・頻脈・狭心症の悪化などの重いリスクが警告されています。脱毛症に対する低用量での長期の安全性は十分に確立していません。ミノキシジル外用(2%・5%)は米国で脱毛症の一般用医薬品として承認されています。スピロノラクトンは米国で高血圧・浮腫などの治療薬として承認されており、脱毛症は承認された効能に含まれません。いずれも医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
主な副作用は、ミノキシジル内服で多毛・むくみ・動悸、スピロノラクトンで月経不順・乳房の張り・高カリウム血症、外用で頭皮のかゆみ・かぶれです。妊娠中・授乳中の人、妊娠を希望している人は服用できません。診察の結果、処方を見送る場合があります。診療の流れは女性の薄毛治療メニューを参照してください。
まとめ
- 女性型脱毛症は、髪の成長期が短くなり、頭頂部を中心に広い範囲の髪が細く薄くなる状態
- 日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)が女性に強く勧める治療は、ミノキシジル1%外用のみ
- ミノキシジル内服は推奨度Dで、脱毛症の治療薬として承認している国はない。低用量の研究では外用を上回る効果は確認されていない
- スピロノラクトンは脱毛症に承認外で、ガイドラインに記載はない。小規模な研究で改善の報告がある
- 効果は少なくとも6か月続けてから判定し、中止すると徐々に元に戻る
女性の薄毛には、女性型脱毛症以外の原因によるものもあります。治療薬を使う前に原因を確かめ、未承認の薬を使う場合は、効果の根拠と副作用の説明を受けたうえで医師と相談してください。