1. ホーム
  2. コラム
  3. 漢方
  4. 不眠の漢方|タイプ別の選び方と代表処方を解説

不眠の漢方|タイプ別の選び方と代表処方を解説

不眠のタイプ別漢方薬を解説する記事イメージ

不眠の漢方は、体質と不眠のタイプ(寝つきが悪い/夜中に目覚める/疲れが取れない)によって合う処方が変わります。 イライラ型には柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散、疲労虚弱型には加味帰脾湯・酸棗仁湯、更年期型には加味逍遙散が代表的な選択肢です。

本記事は、日本東洋医学会厚労省 e-ヘルスネットの情報をもとに、不眠に用いられる漢方のタイプ分類と処方選択の判断軸を整理します。

不眠症と漢方の関係

不眠症は、睡眠導入や睡眠維持に困難があり、日中の生活に支障をきたす状態の総称です。西洋医学では睡眠薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾ系・オレキシン受容体拮抗薬など)が使われますが、依存性・持ち越し効果・認知機能への影響などの課題もあります。

漢方は依存性が少なく、体質改善を通じて睡眠の質を整えるアプローチで、以下のような方に選ばれる傾向があります。

  • 西洋薬の睡眠薬に抵抗がある方
  • 軽度〜中等度の不眠で長期的に付き合いたい方
  • ストレス・更年期・疲労など原因が明確な方
  • 併用薬を減らしたい方

一方、急性期の強い不眠や、翌日の仕事に即影響が出るレベルの状況では西洋医学の睡眠薬が優先されるケースが多くあります。

不眠のタイプ分類

漢方では不眠のタイプを体質と合わせて分類します。自分がどのタイプかの目安は以下の通りです。

タイプ主な症状背景代表処方
イライラ型(実証)寝つきが悪い、イライラ、頭に血が上る、動悸ストレス・気の滞り柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散
更年期型冷えのぼせ・不安・月経異常を伴う不眠ホルモン変動・自律神経の乱れ加味逍遙散
虚弱・疲労型(虚証)疲れているのに眠れない、熟眠感がない気血の不足加味帰脾湯・酸棗仁湯
動悸・胸騒ぎ型胸がざわつく、不安感を伴う不眠気の滞りと虚弱の混在柴胡桂枝乾姜湯
感情の高ぶり型悲しい気持ち・涙もろい・あくびが出るストレス・神経過敏甘麦大棗湯
熱がこもる型ほてり・寝汗・口渇を伴う不眠陰虚・虚熱黄連解毒湯・温胆湯

タイプ別の代表処方

イライラ型|柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散

ストレスやイライラが背景にある寝つきの悪さ、動悸を伴うタイプ。

  • 柴胡加竜骨牡蛎湯: 体格ががっしりしてイライラ・動悸・高血圧を伴う方向け
  • 抑肝散: 神経の高ぶり・歯ぎしり・怒りっぽさを伴う方向け(認知症のBPSDにも使われる)

両剤とも柴胡を含み、気の滞りを流す作用で不眠を改善する方向に働きます。

更年期型|加味逍遙散

更年期世代の女性で、のぼせ・冷え・月経異常を伴う不眠に向きます。加味逍遙散はホルモン変動に伴う自律神経の不安定さを整える代表処方で、イライラ・不安・不眠が重なる更年期症状に広く使われます。

虚弱・疲労型|加味帰脾湯・酸棗仁湯

疲れているのに眠れない、寝てもすっきりしないタイプ。

  • 加味帰脾湯: 気血両虚(気も血も不足)で、貧血傾向・食欲不振・物忘れを伴う方向け
  • 酸棗仁湯: 身体が疲れきっているのに神経が高ぶって眠れない方向け

動悸・胸騒ぎ型|柴胡桂枝乾姜湯

体力がやや落ちていて、胸のざわつき・不安感・寝汗を伴う不眠に向きます。ストレスからくる自律神経の乱れに加え、体が冷えている方に選ばれます。

感情の高ぶり型|甘麦大棗湯

悲しい気持ち・涙もろさ・あくびが止まらないヒステリー傾向を伴う不眠に向きます。子どもの夜泣き・癇癪にも使われる処方で、比較的穏やかな構成です。

漢方と睡眠薬の違い

漢方と西洋医学の睡眠薬の特徴を比較すると、それぞれの使いどころが見えてきます。

比較項目漢方睡眠薬(西洋薬)
即効性弱い(2〜4週間で変化)強い(当日〜数日)
持ち越し効果少ない種類により翌日の眠気が残る
依存性少ない傾向ベンゾジアゼピン系は注意
体質改善期待される期待されない
急性期の強い不眠不向き向く
長期的な睡眠の質改善向く種類により向く

急性期は睡眠薬、慢性期は漢方、という使い分けや併用が一般的な臨床運用です。

漢方で対応しきれない不眠|基礎疾患の評価

以下のような不眠は、漢方単独では改善しにくく、原因疾患の評価が先に必要です。

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS): いびき・日中の強い眠気・起床時の頭痛
  • うつ病・適応障害: 早朝覚醒・意欲低下・抑うつ気分
  • 甲状腺機能亢進症: 動悸・体重減少・手の震え・発汗
  • 慢性疼痛: 痛みで眠れない
  • むずむず脚症候群(RLS): 夜間に足が不快でじっとしていられない

睡眠時無呼吸症候群・うつ病・適応障害・甲状腺機能亢進症・慢性疼痛・むずむず脚症候群は専門の検査・治療が必要で、漢方はあくまで補助的な位置付けになります。

キレイパスでの取扱い範囲

キレイパスオンラインクリニックで取り扱う漢方は**体重管理を中心とした3処方(防風通聖散・大柴胡湯・防已黄耆湯)**で、前節で挙げた不眠の代表処方(柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散・加味帰脾湯・酸棗仁湯・加味逍遙散)は現時点で取扱い外です。不眠を主訴として漢方を希望される方は、漢方内科・心療内科・精神科・婦人科などの診療科で相談することをおすすめします。

一方で、ストレスによる過食(ストレス太り)で不眠も伴う方には、キレイパスで大柴胡湯が関連する場合があります。大柴胡湯は自律神経調整作用が期待される処方で、ストレス性の過食と不眠が重なるケースでは医師判断により選ばれることがあります。自分の体質判定は漢方ダイエット体質診断を参考にしてください。

睡眠の質を上げる生活習慣

漢方と並行して取り組みたい生活習慣の基本は以下の通りです。

  • 就寝時刻の固定: 毎日同じ時間に寝る・起きる
  • 就寝前のスマホ・PC制限: 就寝1時間前からブルーライトを避ける
  • カフェイン: 午後以降は控える
  • アルコール: 寝酒は中途覚醒を増やすため避ける
  • 入浴: 就寝90分前の38〜40度の湯船
  • 運動: 日中の軽い運動(有酸素)が入眠を助ける
  • 室温・湿度: 快眠は室温18〜22度、湿度50〜60%

生活習慣の整えと漢方の併用が、効果の体感につながります。

受診の目安

以下のケースでは漢方の自己選択ではなく、医療機関の受診を推奨します。

  • 2週間以上、週3回以上の不眠がある
  • 日中の強い眠気・集中力低下・倦怠感がある
  • 抑うつ気分・意欲低下が続く
  • いびき・無呼吸を指摘されたことがある
  • 市販の漢方を2か月使っても変化がない
  • 睡眠薬の長期使用を減らしたい

漢方内科・心療内科・精神科・睡眠外来などが主な相談先です。

まとめ

  • 不眠の漢方はタイプ(イライラ・更年期・虚弱・動悸・感情高ぶり・熱こもり)で処方を選ぶ
  • 代表処方: 柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散・加味逍遙散・加味帰脾湯・酸棗仁湯・柴胡桂枝乾姜湯・甘麦大棗湯など
  • 西洋薬の睡眠薬と比べ依存性は少ない傾向だが即効性は弱く、2〜4週間の継続で評価
  • 睡眠時無呼吸症候群・うつ病・甲状腺機能異常などの基礎疾患は漢方の前に評価が必要
  • キレイパス取扱は体重管理3処方で、不眠代表処方は取扱い外(ストレス性の過食を伴う場合は大柴胡湯が関連)
  • 就寝時刻の固定・カフェイン制限・入浴など生活習慣との併用が効果の体感につながる

不眠の原因は人により大きく異なります。自己判断で市販漢方を選ぶ前に、医師の診察で原因とタイプを整理してから処方を決めていきましょう。

よくある質問

不眠で漢方を選ぶメリットは?
依存性が少ない傾向と、体質改善を通じた根本的なアプローチが期待できる点です。ただし即効性は弱いため、翌日仕事に支障が出るレベルの急性不眠には西洋医学の睡眠薬が優先されます。
入眠困難(寝つきが悪い)に向く漢方は?
ストレス・イライラが強い入眠困難には柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散、胸騒ぎを伴うケースには柴胡桂枝乾姜湯などが選ばれます。背景にある不安・緊張のタイプにより処方が変わります。
中途覚醒(夜中に目覚める)に向く漢方は?
疲労・虚弱が背景にある場合は加味帰脾湯・酸棗仁湯、更年期のホルモン変動が関与する場合は加味逍遙散が代表例です。夜中に目覚めて寝つけないタイプは気血の不足が想定されます。
漢方で不眠はどのくらいで改善しますか?
2〜4週間で軽い変化、2〜3か月継続で体質面の改善が評価されます。即効性のある睡眠導入剤とは異なり、徐々に睡眠の質が整う設計の治療です。
睡眠薬と漢方は併用できますか?
医師の判断で併用されることがあります。急性期は睡眠薬で対処しつつ、体質改善として漢方を並行し、徐々に睡眠薬を減らす運用が一般的な流れです。自己判断での併用は避けてください。
漢方で治らない不眠はどんな場合ですか?
睡眠時無呼吸症候群・うつ病・甲状腺機能亢進症・慢性疼痛などの基礎疾患が背景にある不眠は、漢方単独での改善は難しく、原因疾患の治療が必要です。2か月漢方を続けても変化がない場合は原因の再評価を検討してください。

この記事の監修者

佐藤 花子 顔写真

佐藤 花子

医師・糖尿病内科専門医

糖尿病内科専門医として、GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬を用いた肥満症・糖尿病治療に20年以上従事。医療コラムの監修を通じて、オンライン診療における安全な自由診療の普及に協力している。

※本プロフィールは監修医師ブロックのレイアウト確認用ダミーデータです。実在の医師・クリニックを示すものではありません。

参考文献・出典

  1. 日本東洋医学会 EBM委員会 漢方治療エビデンスレポート(日本東洋医学会)
  2. 日本睡眠学会(日本睡眠学会)
  3. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報検索(医薬品医療機器総合機構)
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット(厚生労働省)
  5. 厚生労働省 統合医療情報発信サイト(eJIM)(厚生労働省)
GMO BEAUTY