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【医師監修】サンピロ点眼薬で老眼は改善する?|効果と使い方を詳しく解説

2024.12.23  | メディカルアイケア

【医師監修】サンピロ点眼薬で老眼は改善する?|効果と使い方を詳しく解説

40代後半を過ぎたあたりから、近くのものが見づらくなってきた…そんな経験はありませんか?もしかしたら、それは老眼の始まりかもしれません。最近では、「サンピロ点眼薬」が老眼対策として注目されていますが、本当に効果があるのでしょうか? この記事では、眼科医の渡邉昂大が、サンピロ点眼薬の効果や注意点、そして老眼対策全般について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。老眼に悩むあなたにとって、役立つ情報が満載です。ぜひ最後までお読みください。

この記事の監修者

医師

眼科医 渡邉昂大氏
聖マリアンナ医科大学を卒業し、学生時代より予防医学に興味を持ち『人はなぜ健康でいられるか?』で最優秀論文賞受賞、大学病院研修後、同眼科学教室に入局し、現在横浜市西部病院にて眼科医として手術や外来診療に従事している。日本医師会認定産業医。

1.老眼とは?その症状と原因

老眼とは、加齢に伴いピント調節機能が低下することで起こる視力障害です。40歳頃から発症し始め、年齢とともに進行していきます。主な症状としては、以下のものが挙げられます。

●近くのものが見えにくい
●目が疲れやすい
●細かい文字が見づらい
●頭痛がする

2.老眼のメカニズム:ピント調節機能の低下

  

目のピント調節には、毛様体筋という筋肉と、水晶体というレンズが関わっています。近くを見るときには毛様体筋が収縮し、水晶体が厚くなることで手元にピントを合わせます。遠くのものを見るときには毛様体筋が弛緩して、水晶体が薄くなることで遠くのものにピントが合います。老眼では

・毛様体筋の収縮力が低下
・水晶体の弾力性が低下

老眼のメカニズム

することで水晶体を十分に厚くすることができなくなります。そのため、近くのものにピントが合わせにくくなり、見えにくくなるのです。発症年齢や進行速度は個人差がありますが、一般的には40歳頃から始まり、60歳頃まで徐々に進行します。その後は、進行速度は緩やかになります。

3.サンピロ点眼薬の成分と作用機序

サンピロ点眼薬は、参天製薬株式会社が製造販売する点眼薬です。主成分はピロカルピン塩酸塩 です。アセチルコリンの分解を抑制することで、毛様体筋の収縮を促します。そのため、一時的にピント調節機能を改善する効果が期待できます。

ただし、サンピロ点眼薬は老眼そのものを治療する薬ではありません。あくまで、ピント調節機能を一時的に改善する補助的な役割を果たすものです。

4.サンピロ点眼薬は米国では老眼の承認薬!

サンピロ点眼薬と同成分の点眼薬で米国で2021年に新たに承認された老眼治療の目薬に「VUITY」という商品があります。

「VUITY」には有効成分としてピロカルピンが1.25%の濃度で配合されています。ピロカルピン自体は決して新しい成分ではなく、もともと緑内障の治療薬として使用されていた、サンピロ点眼薬の成分と同じものなのです。

日本国内では様々な薬の保険適応が海外と比較すると遅れる傾向にありますが、サンピロ点眼薬もその中の一つとされています。

医師
眼科医 渡邉昂大氏

日本では未承認ですが、米国では普通に使用されており、効果も安全性も確認されている点眼薬です。日本国内でも早めに保険適応され、安価で提供できると良いなと思います!

5.ピロカルピン(サンピロ点眼薬)と老眼:医学的なエビデンスはあるの?

サンピロ点眼薬は、老眼の症状である近くが見えにくいという症状を一時的に改善する効果があることは、すでに保険適応されている米国の臨床試験で示されています。

【臨床試験概要】
・2つの試験(GEMINI 1・2)に基づき承認
・対象:40~55歳の老眼患者750人(平均年齢49.6歳)
・方法:ピロカルピン1.25%群 vs プラセボ群、30日間の両眼点眼

【結果】
GEMINI 1試験での近距離視力改善率
・ピロカルピン群:30.7%
・プラセボ群:8.1%
と統計学的に有意な改善が見られました。

【効果に関して】
・発現までの時間:点眼後約15分
・持続時間:6〜15時間
・主な副作用:頭痛(14%、大半が軽症)、目の充血で重大な合併症はなし

医師
眼科医 渡邉昂大氏

臨床研究では60歳以上の高齢者に対するデータは限定的になっています。老眼が始まり出す初期のほうが効果があるといえるかもしれません。

6.サンピロ点眼薬の使い方と主な注意点について

正しい点眼方法:手順と頻度

サンピロ点眼薬は、1回1~2滴を1日数回点眼します。朝に1〜2滴を両目に点眼します。

手順 詳細
1. 洗浄 清潔な手を洗いましょう。
2. 点眼 1回1~2滴を点眼します。
3. 安静 数分間目を閉じ、薬液が流れ出ないようにします。

点眼時の注意点:コンタクトレンズとの併用など

コンタクトレンズを装着している場合は、点眼前にレンズを外してください。また、点眼後、5分間はレンズを装着しないようにしましょう。その他、点眼後、一時的に視界がぼやける場合がありますので、車の運転や機械の操作などは極力避けましょう。

サンピロ点眼薬の濃度に関して

老眼治療で使用されているピロカルピンの濃度は1.25%です。
日本国内では1.25%の濃度は入手できなく、0.5、1.0、2.0%の中から選択することになります。当院ではまず0.5%の濃度から初めて、効果を判定しつつ、1.0、2.0と濃度を上げていくことが多いです。

サンピロ点眼薬の副作用とリスク

サンピロ点眼薬の使用によって、吐き気、嘔吐、腹痛などの副作用が起こることがあります。また、まれに、眼の痛み、充血、かゆみなどの症状が現れる場合もあります。これらの症状が現れた場合は、すぐに点眼を中止し、医師に相談しましょう。

他の点眼薬との併用について

他の点眼薬と併用する場合、薬剤の相互作用が起こる可能性があります。必ず医師または薬剤師に相談してから併用しましょう。特に、他のコリンエステラーゼ阻害剤との併用は避けるべきです。

保管方法と有効期限

サンピロ点眼薬は、直射日光を避け、涼しい場所に保管しましょう。また、開封後は、速やかに使用し、1ヶ月を目安に使い切りましょう。有効期限を過ぎた薬剤は使用しないように注意しましょう。

7.サンピロ点眼薬以外の老眼対策は?

老眼鏡の選び方と適切な使用

老眼鏡は、老眼の最も一般的な治療法です。適切な度数の老眼鏡を使用することで、近くのものが見えやすくなります。老眼鏡を選ぶ際は、眼科医の検査を受けることが大切です。自分に合った度数の老眼鏡を使用することで、目の疲れや頭痛を軽減することができます。

コンタクトレンズによる老眼矯正

遠近両用コンタクトレンズや、多焦点コンタクトレンズを使用することで、老眼を矯正することができます。コンタクトレンズは、老眼鏡と比べて自然な視界を得られるというメリットがあります。ただし、コンタクトレンズは、適切なケアと使用が重要であり、眼科医の指導に従って使用しましょう。

対策 詳細
バランスの良い食事 目に良い栄養素(ビタミンA、ルテインなど)を摂取しましょう。
十分な睡眠 睡眠不足は目の疲れにつながります。
目の体操 目の筋肉を鍛えることで、ピント調節機能を改善できます。
休憩 パソコン作業中はこまめに休憩を取りましょう。
ブルーライトカット眼鏡 パソコンやスマホからのブルーライトを軽減します。

老眼予防のための目の健康習慣

老眼は加齢による自然な現象ですが、進行を遅らせるためにできることがあります。紫外線対策、喫煙の控え、適切な読書距離の確保など、日々の生活習慣に注意することで、目の健康を守り、老眼の進行を穏やかにすることができます。

8.サンピロ点眼薬に関するよくある質問

Q サンピロ点眼薬は、どのくらいの期間使用すれば効果を実感できますか?

A 効果の現れ方には個人差があり、すぐに効果を実感できる方もいれば、数日かかる方もいます。効果が感じられない場合は、医師に相談してください。自己判断で継続的に使用し続けることは避けてください。

Q サンピロ点眼薬を使用中に、視力に異常を感じた場合はどうすれば良いですか?

A 視力に異常を感じた場合は、すぐに点眼を中止し、医師の診察を受けてください。放置すると、状態が悪化する可能性があります。

Q サンピロ点眼薬は、他の眼科用薬と併用できますか?

A 他の眼科用薬と併用する場合は、5分以上は時間をあけて使用してください。
また、必ず医師または薬剤師に併用する薬に関して相談してください。薬の相互作用によって、予期せぬ副作用が起こる可能性があります。

Q サンピロ点眼薬を使用できない人は?

A 虹彩炎の方は縮瞳により虹彩の癒着を引き起こす可能性があり使用できません。また、網膜剥離と言われている方も悪化の可能性があるため使用は推奨できません。

Q サンピロ点眼薬は保険適用できない?

A 日本国内では老眼の治療方法としては保険適用外の薬剤のため、全額自己負担となります。

Q サンピロ点眼薬の効果を実感できない場合、どうすれば良いですか?

A 効果を実感できない場合は、他の老眼対策を検討するか、眼科医に相談して、より適切な治療法を探しましょう。サンピロ点眼薬は万能ではありません。他の治療法と併用することで、より効果が期待できる可能性があります。

まとめ|サンピロ点眼薬と老眼対策:適切な使用方法と総合的なケア

サンピロ点眼薬は、老眼の症状を一時的に緩和する効果がある点眼薬です。老眼は治療が難しい症状ですが、眼鏡の使用、手術といった今までの治療方法とは違い点眼という簡単な方法でアプローチできる選択肢としてうまく使うことが期待されています。

適切な使用方法を守り、副作用に注意しながら使用することが大切です。老眼対策には、サンピロ点眼薬以外にも、老眼鏡、コンタクトレンズ、手術など様々な方法があります。ご自身の状況や症状に合った方法を選択し、総合的にケアを行うことが重要です。
老眼でお悩みの方は、お気軽にキレイパスオンラインでご相談ください。キレイパスオンラインでは、丁寧な診察と分かりやすい説明を心がけております。ご予約はこちらから承っております。

医師
眼科医 渡邉昂大氏

老眼の対処法として、老眼鏡や眼内レンズでの治療はめんどくさい、大掛かりだなと感じている方はまず点眼の治療から始めてみると良いと思います。まずは気軽に相談ください。